平成27年度下半期活動報告(海外)

A. ブッタガヤ郊外の貧困農村の教育支援

9月に当会の代表がコーディネーターとともに支援地であるラフールナガール村を訪問し、今までのプロジェクトの進行状況を確認し、今後の展開の可能性を探りました。まず、4月から始めた中学生への奨学金支給の取り組みですが、小学校の校長先生として当会のプロジェクトに協力しているドゥルガー校長からの報告では、4月の段階で対象にした中学生25人のうち、現在(9月時点)では20人が中学校に継続して登校しているとのこと。つまり5人は不登校の状態になったということでした。本当にその報告が正しいか調べるために、月曜日の登校時間に村から学校に登校する生徒を目視で確認しました。それによると確かに20人が登校していました。なお、近隣の村にあるマンコシ中学には11人が通い、さらに遠い距離にあるムラタ―中学には9人が通っています。半年で5人も不登校が出たという事は3年間では半分になると考えられます。ドゥルガー校長はこの20人のうち、今までは卒業まで学校に通う子供は3、4人位だったのこと。理由は階層が低いラフールナガール村の子どもは、差別を受けることが多く、学校に通い辛くなることが多いそうです。奨学金を出し続けることで、不登校になる子ども達の増加を食い止めることが出来るかどうか、模索していきたいと考えています。

今回、ドゥルガー校長がもう自分では子どもに奨学金を渡したくないといい、毎月の奨学金授与の手伝いを辞退することになりました。理由は中学校に行っていない子供(家で親とともに農作業や家事をするため)の親が、学校に行かせられない家庭にこそお金を渡すべきだといって非難を浴びているからだそうです。この意見は事実正論も含まれています。しかし、学校に行かせられない家庭に直接現金を与えてしまうと、自立支援にはなりません。当会ではそうならないために、学校にいけない子供の家庭に経済的支援をおこなうべく、マンゴーの苗木の提供を行ったり、縫製業の職業訓練などの支援を模索しています。

当面は当会のコーディネーターが現地に訪れた時に、奨学金を手渡すことにしました。活動を理解してくれる現地のキーマン育成もこの村の課題です。

ムラター小学校。高校も併設されているため、進学したい子は隣村の中学まで通っている。
ムラター小学校。高校も併設されているため、進学したい子は隣村の中学まで通っている。
マンコシ中学に通う奨学生
マンコシ中学に通う奨学生
ムラター中学校に通う奨学生
ムラター中学校に通う奨学生

B. 縫製トレーニング事業

マンゴーの実が収穫できるには7~10年はかかるために、もっと短期で小作以外から収入を得る方法を探す必要があります。今回の訪問で、その可能性が見えました。それは縫製業を村に興すことです。村を視察する際に3件の家で足踏みミシンを保持しており、それぞれが家族、親族の服を作っているということが分かりました。仕事にはしてはいません。そこでその3件の女性に指導料を払い、中学校に通っていない少女(約15人)に縫製の職業訓練を受けてもらうことを検討しています。また同時に、町でその製品を販売できるような体制をつくっていこうと考えています。この販売体制の確保は将来、マンゴーが村で実った時の町での販売にも役立つでしょう。

足踏みミシンを持つ女性
足踏みミシンを持つ女性

C. マンゴー植林による農村開発

昨年9月にマンゴーの苗木を8か所の家庭に配布しました。今年3月の調査ではそれぞれの家庭でマンゴ-の苗木が育っていました。当初は牛やヤギに苗木を食べられてしまうのではないかという危惧がありましたが、各家庭ではレンガを積んでそれを防ぐ努力をしていました。ところが今年9月に調査したところ、ほとんどの家庭でマンゴーの苗木が枯れてしまいました。乾季の水不足が原因だと村人は考えています。しかし、購入した苗木はこの村の土壌にあわなかったのではないかと、日本の苗木屋がアドバイスをしてくれました。実は苗木が枯れた家族は、その代わりにと自分でマンゴーの種を今年の5月に庭に植えていました。

その苗木は育ち始めました。喜ばしいことは、仏教子ども救援基金がマンゴーの苗木を配布したことをきっかけに自分たちでマンゴーの木を植林し始めたということです。さらに種から植えたマンゴーの木であれば、この村の土地に合うかもしれないということです。今、インドでは乾季が始まります。来年の3月まで続く乾季を種から植えたマンゴーが耐えられるならば、この村にマンゴーが根付く可能性が出てきます。

新しく植えたマンゴーの苗。牛などに食べられないように周りを棘のある木などで覆って工夫している。
新しく植えたマンゴーの苗。牛などに食べられないように周りを棘のある木などで覆って工夫している。

D. ムンバイの人身売買から少女を救出する活動

今年9月にインドのムンバイでの人身売買の現状と救援団体を視察してきました。約2年にわたり、カンボジア、タイ、ラオス、ベトナム、ミャンマー、ネパール、バングラデシュ、インドを調査員2人に手分けして回ってもらい、現在では最もひどい状況がインドのムンバイであるという結論になりました。

そのために、今年の9月に代表の私、二神がムンバイに赴き、現状と現地の支援団体の活動を視察してきました。

ムンバイには10万人程度の売春婦がいて、その多くが中心部にある買春街で働いています。

その中にはインドの農村、特にダリットと呼ばれる最下層民の少女やバングラデシュやネパールの貧困農村から、だまされたり、親が借金で仕方なく人身売買業者に売ったりして強制的に買春に従事させられている子ども達も含まれます。その救出活動を数件の団体が行っていますが、最も古くから、また効果的に継続的に活動を行ってきたのがレスキュー・ファンデーションという民間団体でした。

昨年はこの団体が252人の少女を救出しました。インド政府も約200人の少女を救出したそうですが、政府の救出は形ばかりのことが多く、本当に救出が必要かどうか疑問が残る女性も救出して数のかさ増しをしていますから、実質、緊急を要する少女の救出はこの団体の肩にかかっているという状況です。

ムンバイにある売春宿
ムンバイにある売春宿
レスキューファンデーションの事務所。買春街のオーナーや、マフィアの襲撃の恐れがあるため、入口は頑丈な門に閉ざされ、銃を持った警備員がいる。代表の女性の夫は買春街のマフィアに殺されている。
レスキューファンデーションの事務所。買春街のオーナーや、マフィアの襲撃の恐れがあるため、入口は頑丈な門に閉ざされ、銃を持った警備員がいる。代表の女性の夫は買春街のマフィアに殺されている。

救出のためには正体がわからないように買春街に潜入捜査する担当が6人で目を光らせていますが、その11人が話してくれたのは、何度か正体がばれて暴行を 受けたということです。私が訪問した時も事務所にいる彼にタレこみ情報の電話がかかってきて、買春街に出かけていきました

 

少女の年齢ですが、昨年、12歳を7人、13歳を14人、14歳を36人、15歳を45人救出しており、救出少女の半数近くが小学生高学年から中学生とい う状況で昼間から客引きをする売春婦です。以前はその割合がさらに多かったということです。また多くの少女が救出までに1年以上の強制買春に従事させられ ており、救出後は時間をかけてのカウンセリングが必要だそうです。 

 

現在、人件費や施設の維持、救出した少女の生活の面倒等の費用は各国の民間団体や政府の支援で賄えているとのこと。その活動費用は年間8000万円にも達します。その中で、救出したのちに、育った村(バングラデシュ等の外国も含む)に帰すための諸費用は500万円かかります。年間200人程度の女性を帰すのに職員も同行しないと帰った村で事情を説明できずに、追い出されてしまうこともあるからです。そのために職員はしばらく村に滞在して被害女性をサポートする必要もありますので、思った以上に費用がかさむことを確認しました。バングラデシュの場合には飛行機による帰国となりますが、付添の職員の往復交通費と滞在費等を含めても1人帰すのに6万円はかかりますので、現在被害女性の4割がバングラデシュからの女性であることを考えると、会計とのミーティング、あるいは航空運賃や職員の給料等を私が計算してみても、500万円の予算は妥当だと判断されます。

 

そして来年度は 400万円程度の寄付が見込まれており、残り100万円の寄付を仏教子ども救援基金にお願いされました。そして寄付の約束をしてくれれば、救出した少女の 経緯やその後の様子(プライベートなことなので、支援者にしか教えないとのこと)、会計報告や今後の現地視察の便宜を図るとのことです。わたしは数年にわ たりインドの地元団体の多くが「金はよこせ、口は出すな」といいながら、いい加減な事業をしているのを見てきましたから、この団体はインドでも真面目に活 動している希少な団体だと考えています。

団体の代表はムンバイだけでなく、ニューデリーやカルカッタにも買春街があり、予算が増えれば、もっと多くの少女が救えるとも言っていました。 

しかし、現在仏教子ども救援基金は50万円程度しか、この団体に協力する予算がありません。

 

そ のために他団体との連携を模索して、なんとか支援金を捻出する予定です。そしてこの団体への支援をすることが決まりましたら、定期的な視察、また村に帰し た後のサポートを充実させる仕事を今後考えていきたいと考えます。とにかくどんな良い団体でも時間がたつと事業が漫然となりがちですから、それを防ぐため にも定期的にこの団体の活動を視察し助言、活動がさらに効果的になるように提案、指導を行いたいと思います。

仏教子ども救援基金では、上記の事業を行えるよう募金活動を始めます。

 

どうぞ皆様のご支援を宜しくお願いします。

 

 

社団法人 仏教子ども救援基金


〒298-0025 千葉県いすみ市山田1886 天徳寺内

 

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