カンボジアというと「子供が学校に行けず、まだまだ経済も未発達」といったイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし今回、約10ヶ月間掛けて調査して分かったのは、カンボジアは近年大きく変わってきているということです。
現在カンボジアの就学率はとても高く、都市部ではほぼ100%の子供が学校に行っています。また、農村部でも学校に行けない子どもを探すのは容易で無いほど殆どの子供が、ちゃんと就学していました。
但し都市部の公立校の場合は小学校や中学校へ通うのにも、お金がかかります。その理由は、教師が自身の薄給を補う為、生徒1名に付き、毎日約20円~100円を非公式な授業料として徴収しているからです。もし、この授業料を児童が払わなければ、教師はその児童に対して、まともに勉強を教えなくなります。
もちろん裕福な家庭の子供が通う「高額な授業料」の私立校も沢山有ります。しかしそうした学校に通うことが出来るのは一握りの富裕層から中流層までです。
家庭によっては、一日20円ですら家計に大きな負担を与えるところもあります。しかし、その反面、現在カンボジア(特にプノンペン市内)には、明らかに供給過剰と言えるほど多くの無償教育支援を主な活動とした各国のNGO団体が至るところで運営しています。
プノンペンには数多くのスラムがあり、そこに住む住人の多くは「缶/瓶/ダンボール」といった資源ゴミをリヤカーで集め回って売るという仕事をしています。その仕事では一日約100円~400円の収入が得られますが、そこから家賃(スラムでも家賃はかかる)や光熱費、食費などの生活費を差し引くと、子供が多い家庭は授業料を払うのも大変です。但し、そうしたスラムの家庭も殆どは無理をしながらでも子供を学校に行かせています。時々「仏教子ども救援基金」からの支援を受けたいが為に、「子供が学校に行けない」と言う親もいますが、よくよく調査した結果、そうした家庭でも殆どの場合は子供が就学していました。
都市部では給料の良い仕事を得るためには学歴、学力がとても大事で、子供に給料の良い職に付いて欲しいので、親はきちんと子供を学校に行かせている現状です。
また農村部では、都市部に比べると就学率は下がるもののほとんどの子供が学校に行っていました。しかし、学校に行っていない子供もちらほら見受けられました。その子供の親に学校に行っていない理由を聞くと、「自宅から学校までの距離が遠いから」とのことでした。しかし、こうした家庭より何倍も家と学校の距離が離れた家から、毎日通学している子供も多く見受けられました。そうした調査を踏まえた結果私は「自宅から学校までの距離」と「未就学率」は比例していないと感じました。その理由は、現地の方もおっしゃっていましたが、これは親の「子供を就学させようという意識」の問題です。農村部ではほぼ100%の人が農業従事者であり、学力や学歴が無くても将来それほど困らないと思っている親も少なくありません。それが子供を就学させなくてもいいという意識に繋がっているのです。
*右写真は、その日の集めたゴミの量り売りに来ていた父親と仕事についてきた息子
経済においては、首都プノンペンがガンボジアを牽引して大きく発達してきています。プノンペンは高層ビルが立ち並び、道にはボロボロのバイクから高級車まで様々な乗り物でごった返しています。デパートや外資系レストランも多く、旅行者からビジネスマンまで多くの外国人が見受けられます。また、チャイナリスクの影響もあり日系企業もカンボジアにどんどん進出してきています。
このように教育環境が整備されつつあるということは大変喜ばしいことであり、今後も更に良い方向に向かって行くと思われます。
こうした現状から「仏教子ども救援基金」では、カンボジアでの支援プロジェクトにつきましては、見合わせる事に致しました。
その為、次に私(坂谷)が今後活動する調査地域は、経済発展と共に子供達の生活状況が「学校に行けるようになるまで改善したカンボジア」から、アジア最大級の「売春宿街ソナガチ」がある、インド東部の都市「コルカタ」に決定いたしました。
我々が事前に得た情報では「ソナガチは売春宿街としてはHIV感染者、エイズ患者が少ない」とありました。しかし、そうは言っても、アジア最大の売春宿街であれば、おそらく多くの子供がHIVウイルスを母子感染している事と思われます。また、そういった子供達には何の責任もありません。だからこそ「仏教子ども救援基金」では、既存のNGO団体が手掛けてこなかった「長期滞在型の調査」を行う事で、まずは「本当に支援が必要な子供はいるのか?」といった調査から「対象児童を発見した場合に行う各ケースに適した支援」までを引き続きタイムリーに展開してまいります。
いつも皆様から託して頂いている「仏教子ども救援基金」へのご支援、この場を借りて心よりお礼申し上げます。
仏教子ども救援基金
ボランティア
坂谷 拓実