「仏教子ども救援基金」では2012年12月2日から22日までの間、インドで最も貧しい州と言われているビハール州のブッタガヤにおいて、その貧困状況を調べ、そこから、どの様なサポートが最も必要かつ有効な支援になるのかを考案してきました。皆様もご存知の通り、このブッタガヤという地は「お釈迦様=ブッダ」が終焉を迎えられた地でもある事から現在、世界中の仏教寺院が集まり、いくつものお寺が設立されています。しかもそのお寺の大半は「フリースクール」などを運営する事でブッタガヤ市内に居住する貧しい家庭の子供達に質の高い教育を(ところによっては給食も)提供しています。
こうした各寺院による支援の他にも、この辺りにはきちんとした設備の整った公立学校も充実している為、学校に行く事の出来ない環境に置かれた家庭と言うのは皆無と言っても過言ではありません。
但し、ブッタガヤ近郊の農村に居住する子どもが11月~3月までの観光シーズンのみ出稼ぎ的に「物乞い(物売り)」をしているケースが目に付く為、観光で訪れる方の中には「ブッタガヤの子供達は学校にも行けず物乞いをしている子供達が沢山いて可哀そうだ」といった誤解をされる方も多い様です。
しかし、こうした子供達がブッタガヤから居なくならない最大の理由は「観光客がお金や物を上げてしまう」からという事を我々日本人をはじめ、ブッタガヤを訪れる全ての観光客はもっと真摯に理解を示さなければいけないのだと思います。
ブッタガヤ市内の次に調査を行ったのはブッタガヤの川向こうにある「スジャータ村」でした。
しかし、このスジャータ村にもNGO「ニランジャナスクール」をはじめ、スジャータ寺が運営する3校のフリースクールから公立学校まで、子供達の教育環境については、かなり充実していました。
この様にブッタガヤ市内に留まらず、橋を渡った隣の村までNGOの支援は行き届いていました。しかし問題はその先の農村地域にありました。そこはブッタが生前に「悟り」を開いたとされる「前正覚山」の麓にあるラフールナガールマンコシ村でした。いや正確に言いうとすれば、この村内でも最下層カースト(スードラ)と位置づけられ、未だに差別的な生活を強いられている人々が集まり構成されているラフール村内の一部地域(前正覚山の麓)に、この辺りで最も深刻な貧困問題は顕在していました。
しかし、その一方で、同村内でも「クシャトリア」などの高カーストが暮らす地域になると「スードラ」地域とは異なり多くの家庭には電気が引かれ、道路はコンクリートで舗装され乳牛(1頭辺り2~2,5Rsの資産価値)も沢山所有していました。
そして、何よりも驚いたのは小中学校が山麓地域とは比べ物にならないくらい立派な造りであったと言う事です。また「クシャトリア」地域の子供達はほぼ全員が学校に通っていました。しかし、一方では2kmしか離れていない最下層カースト地域になるとその地域の就学率は50%にまで下がってしまいます。
スードラ地域に居住する人々の主な収入源は「就農=雇われ農家」であるため、日当はわずか120~150Rsです。
*この辺りの中流階層の平均月収は5000~10000Rs(約¥8000~16000-)
しかも収穫期や播種期以外に仕事は無く(通年労働に換算すると4ヶ月のみ)、更に近年ではクシャトリア地域の大地主が大型のトラクターやコンバインを購入して生産効率の向上及び人件費削減を進めていることから、雇用の削減も急速に進んでいるとの事です。また、同時に隣町のガヤ地域には「売春」をしている女性が増えているため、このままでは「基礎的な教養も収入源(仕事)も無い」この辺りの若い女の子達も近い将来
ガヤ/パトナなどの繁華街に出て、そうした仕事をせざる終えなくなる可能性は十分に考えられます。
*我々「仏教子ども救援基金」では、そうした問題に陥る前に何らかのサポートを行う事で15歳以下(特に女の子)を性犯罪や人身売買に巻き込まれない様に守る事を最優先課題と位置づけ活動を展開しております。
また、この地域は「ブッタが悟りを開いた地」である「前正覚山」の麓にあたる為、日本人(特に仏教徒)にとっても、ゆかりの深い地域になります。
現在この地域はスジャータ村から更にもう一本川を隔てたところにあり、この川には橋が架かっていない為、20km以上、北に大回りをして二つの川が合流したところに掛けられている橋まで行かなければ、この村に辿り着く事は出来ません。しかも5月以降に振り出す大雨(雨季)によって舗装されていないこの辺りの村の道路は、山から流れる雨水によって更に悪化してしまいます。そうした悪条件も重なり、現在この辺りで活動しているNGOは、韓国系キリスト教会が運営している「スジャータアカデミー」というフリースクールが、ただ一校あるのみです。しかしこの学校の定員は400名である為、この辺りにある全ての村の人口2万人と比例してもお判り頂ける通り、明らかに供給不足に陥っております。しかも、この辺りに居住する子供の両親自身、今まで学校には、きちんと通った事が無いまま大人になってしまった人々ばかりである為「子どもを学校に通わせる意義(必要性)」というものを正しく理解していない親が数多くいる事も就学率を下げる大きな要因になっています。
そこで「仏教子ども救援基金」では「最低カースト(スードラ)として差別を受け続けてきたラフールナガールマンコシ村に住む母親達」に現在、南インドにて別のプロジェクトとして進めている「デコボールペン」生産事業を「子供達をきちんと学校に通わせる」事を条件として、この村の子どもの母親達にも、この仕事を提供するシステムを構築して行く計画をしております。この新たなプロジェクトが実現すれば、彼らの「安定した仕事の確保+子供達の就学率UP」にも繋げて行くことが出来ます。
「仏教子ども救援基金」では、ここに居住する最貧困層の人々に対し「与えられるだけの支援」的感覚から「自立に繋がる支援を受けている自覚へと彼らのモチベーションをシフトさせ且つ本当に彼らが自立して子どもをしっかりと学校へ通わせるようにする為の計画をしております。しかしこの計画を実現させる為には「初期投資」というものが必要になってくるのも現実です。
そこで「お釈迦様」ゆかりの地域支援という御縁からも日本の各お寺様には特に、こうした現実を正しく理解して頂き且つ応援を頂ければと願っております。
いつも「仏教子ども救援基金」の活動をご支援いただき本当にありがとうございます。今後ともご支援、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
仏教子ども救援基金
ボランティア
齋藤 泰治